Jリーグ2024年人件費効率ランキング|最もコスパが悪いクラブはどこ?

Jリーグの人件費と成績の効率を分析する抽象的なイラスト。男性がグラフやサッカー関連のアイコンを見つめて考えている。

「あなたの応援するクラブは、本当に“お金を活かせて”いますか?

あなたの応援するクラブは、本当に“お金を活かせて”いますか?

Jリーグは2025年5月27日、各クラブの2024年度のクラブ経営情報を先行公開しました。

今回発表されたのは、3月決算の柏レイソルと湘南ベルマーレを除く58クラブの決算データ。その中でも注目を集めたのが「トップチーム人件費」です。

最多は浦和レッズの31億8600万円。ヴィッセル神戸が28億1000万円、川崎フロンターレが27億4400万円と、いずれも国内トップクラスの資金力を誇るクラブが上位を占めました。

これらのクラブは、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)やAFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)といったアジアの頂点を目指す国際大会への出場常連でもあります。

つまり、単に国内で勝つだけでなく、アジアの舞台で戦うための“人材投資”としても、多額の人件費は重要な意味を持っているのです。

──しかし、その巨額投資は、果たして「勝点」や「得点」といった成果に見合っているのでしょうか?

今回は、J1・J2・J3の全クラブを対象に、「勝点1点あたり」「得点1点あたり」の人件費を算出し、コストパフォーマンス(コスパ)を徹底比較。

思わずうなってしまう、驚きのランキングが明らかになります。


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「浦和はお金かけてるから強いよね」

そんな言葉を、スタジアムで何度も耳にしてきました。

確かに、Jリーグが発表した2024年度のクラブ経営情報によれば、浦和レッズのトップチーム人件費は31億8600万円とJ1で断トツ。誰もが“最強クラブ”と期待するのも無理はありません。

しかし、実際の成績は勝点48、得点49

つまり、勝点1点あたり約6638万円、得点1点あたり6500万円以上が費やされている計算です。

2024シーズン、私も埼スタで何試合か観戦する機会がありました。ピッチ上ではさまざまなチャレンジが試されていて、選手たちが新たなスタイルに取り組んでいる様子が印象的でした。

人件費がリーグトップクラスである浦和レッズですが、2024シーズンは「結果とプロセスのバランスを模索する過渡期」ともいえる状況だったのかもしれません。

「強いクラブ=賢いクラブ」とは一概に言い切れない。

むしろ、どれだけの試行錯誤を経て、チームが進化していくのか──そこに注目して見守っていくのが、サポーターとしての楽しみの一つなのだと改めて感じました。


「データの裏側」から見えてきた、真の実力

ここで、Jリーグが発表した2024年度の決算データをもとに、J1・J2・J3全58クラブの勝点1点・得点1点あたりの人件費を独自に算出しました。

クラブごとの「お金の使い方」が数値で浮き彫りになると、見えてくるのは意外な真実。

圧倒的な資金力を誇るクラブが、実は“最も非効率!?”だったり。逆に、限られた予算で驚異的な成績を出している“本当に賢いクラブ”も存在していました。

数字だけでは語れない、戦術、組織力、クラブ哲学が、その裏にあるのです。

ここからは、3つのカテゴリーごとに“コスパ優等生”と“コスパ赤点”を具体的に紹介していきます。

あなたの推しクラブは、果たしてどちらに入っているでしょうか?


J1コスパ最強クラブ、それがFC町田ゼルビア

2024年のJ1で、「最もコスパが良かった」クラブ──それがFC町田ゼルビアです。

トップチームの人件費は24億7800万円とリーグ中位規模ながら、勝点66・得点54を記録。

勝ち点1点あたり約3754万円、1得点あたり約4589万円、と、効率性ではJ1トップクラスです。

実際に、2024シーズンに町田の試合を観戦した際、特に印象的だったのは、前線からの90分間ノンストップのプレスと、試合展開に応じて的確に動くベンチワークでした。

もちろん、注目のスター選手も何人か存在しますが、それ以上に目立ったのは、すべての選手が役割を理解し、組織として機能していることでした。

個の力ではなく、戦術の中で全員が歯車となり、チームとしての完成度を高めていたのです。

「選手個人」ではなく、「チーム全体」で勝つ──

それがFC町田ゼルビアの強さの本質であり、まさに“お金では買えない勝利の方程式”を体現しているように感じました。観ていて本当にワクワクする、そんなサッカーでした。


J1で最も非効率!?:浦和レッズと東京ヴェルディの対照的な課題

すでに紹介したとおり、浦和レッズは2024年度のJ1で最も高額な人件費(31億8600万円)を投じたクラブですが、勝点や得点に対する効率はリーグ内で最低レベルとなっています。

もちろん、ピッチには日本代表経験者や有力な外国籍選手が揃い、戦力的にはトップクラス。

それでも、試合ごとに戦術の一貫性が見えにくく、連携にズレを感じる場面も少なくありませんでした。

「人材は揃っているのに、なぜか機能しない」──そのもどかしさが、数字にも表れているように思います。

これは決して批判ではなく、「資金があるからこそ、求められる完成度も高い」という期待の裏返し。

むしろ今こそ、育成・スカウティング・戦術構築を含めた“クラブとしての再設計”が必要なタイミングなのかもしれません。


一方で、浦和とはまったく異なる意味で注目されたのが、2024シーズン昇格1年目の東京ヴェルディです。

彼らのトップチーム人件費は9億200万円とJ1最少クラス。にもかかわらず、勝点56、得点51をマークしています。

計算すると、勝点1点あたり約1610万円、得点1点あたり約1780万円

つまり、“お金をかけずに、しっかり結果を出している”非常に高効率なクラブといえます。

若手主体の編成、走力と組織力をベースにした戦い方。

派手さはないかもしれませんが、試合ごとに“やるべきこと”が整理されており、チームとしての完成度は非常に高い印象です。

クラブ名人件費(万円)勝点得点勝点1点あたり人件費(万円)得点1点あたり人件費(万円)
浦和レッズ31860048496637.56502.04
北海道コンサドーレ札幌21760037435881.085060.47
名古屋グランパス27190050445438.06179.55
川崎フロンターレ27440052665276.924157.58
ジュビロ磐田19480038475126.324144.68
横浜F・マリノス23660052614550.03878.69
FC東京23340054534322.224403.77
サンフレッチェ広島26820068723944.123725.0
ヴィッセル神戸28100072613902.784606.56
ガンバ大阪25480066493860.615200.0
鹿島アントラーズ24750065603807.694125.0
FC町田ゼルビア24780066543754.554588.89
京都サンガF.C.16800047433574.473906.98
セレッソ大阪18250052433509.624244.19
サガン鳥栖10810035483088.572252.08
アビスパ福岡14240050332848.04315.15
アルビレックス新潟9700042442309.522204.55
東京ヴェルディ9020056511610.711768.63
柏レイソル
湘南ベルマーレ

J2の光と影──ファジアーノ岡山と清水エスパルスの明暗

2024年のJ2リーグで、最も鮮やかな“コスパの差”を見せたのがファジアーノ岡山清水エスパルスです。

岡山のトップチーム人件費はわずか6億6800万円。この予算で勝点65を獲得しており、勝点1点あたりの人件費は約102万円とJ2屈指の効率を誇ります。

私の知人である岡山サポーターは、「今年は補強も控えめで資金的に本当に厳しいけど、監督が若手や控え選手をしっかり活かしている」と、嬉しそうに語ってくれました。

実際に現地で試合を見た際も、走力と戦術遂行力の高さが際立っていました。

一方で清水エスパルスは、人件費21億5700万円で勝点82を獲得し、1勝点あたり約2630万円という数値となりました。

タレント揃いの陣容はJ1でも通用するレベルと言われており、個々の選手のスキルの高さは確かです。

ただ、知人の静岡在住サポーターからは「選手のポテンシャルは非常に高いが、チームとしての成熟にはもう一歩という印象」との声もありました。

これは、チームが進化の過程にあるという証拠かもしれません。

一方で岡山のように、限られた予算でも組織力を武器に戦うクラブも存在します。

それぞれに異なるアプローチがあるからこそ、J2リーグの魅力はより多様で奥深いものになっています。

このコントラストこそ、J2の奥深さと、経営・戦術の重要性を物語っているのではないでしょうか。

クラブ名人件費(万円)勝点得点勝点1点あたり人件費(万円)得点1点あたり人件費(万円)
清水エスパルス21570082682630.493172.06
V・ファーレン長崎15190075742025.332052.7
横浜FC14070076601851.322345.0
徳島ヴォルティス10100055421836.362404.76
ザスパ群馬3260018241811.111358.33
ジェフユナイテッド千葉8890061671457.381326.87
大分トリニータ5480043331274.421660.61
ベガルタ仙台7340064501146.881468.0
鹿児島ユナイテッドFC3420030351140.0977.14
モンテディオ山形7250066551098.481318.18
ヴァンフォーレ甲府4760045541057.78881.48
ファジアーノ岡山6680065481027.691391.67
栃木SC339003433997.061027.27
水戸ホーリーホック372004439845.45953.85
レノファ山口FC447005343843.41039.53
愛媛FC316004041790.0770.73
いわきFC367005453679.63692.45
ロアッソ熊本273004653593.48515.09
藤枝MYFC270004638586.96710.53
ブラウブリッツ秋田296005436548.15822.22

J3の衝撃──「泥臭さ」で勝つ八戸と、重すぎる大宮の現実

2024年J3の中で、最も対照的な2クラブがヴァンラーレ八戸大宮アルディージャです。

八戸のトップチーム人件費はわずか1億4400万円。その予算で得点44を記録しており、得点1点あたり約327万円という驚異的な効率を誇ります。

私自身、2024シーズン八戸戦を何度か観ましたが、選手たちのプレーには一切の無駄がない印象でした。

スライディングで相手のボールに飛び込む姿、体を張って守り切るゴール前──まさに「泥臭くても、全力で勝ちをもぎ取る」という信念が伝わってきます。

サポーターの応援も一体感があり、資金は少なくても“心を動かすサッカー”がそこにありました。

一方、大宮アルディージャはJ3の中で人件費7億1900万円という大きな投資を行いながら、得点1点あたり約998万円という結果に。

J1での実績を持つクラブということもあり、シーズン前から注目と期待が集まっていました。

その分、数字上の効率には課題も見えてきますが、これは再構築の途中であるがゆえの通過点とも言えるでしょう。

対照的に、ヴァンラーレ八戸は限られた予算の中で地道に勝点を積み重ね、組織力を武器に戦っています。

「お金の多寡」だけが勝敗を決めるわけではない──
J3では、本気で戦う意志と、戦術の浸透度こそが何よりの力になる。

そう感じさせられる、両クラブの取り組みの違いが際立った2024シーズンでした。

クラブ名人件費(万円)勝点得点勝点1点あたり人件費(万円)得点1点あたり人件費(万円)
いわてグルージャ盛岡2790022271268.181033.33
大宮アルディージャ719008572845.88998.61
松本山雅FC469006061781.67768.85
ツエーゲン金沢378005050756.0756.0
AC長野パルセイロ239003744645.95543.18
SC相模原332005341626.42809.76
FC今治399007362546.58643.55
FC岐阜287005364541.51448.44
奈良クラブ188003943482.05437.21
FC琉球221004745470.21491.11
テゲバジャーロ宮崎197004646428.26428.26
ギラヴァンツ北九州235005641419.64573.17
カマタマーレ讃岐173004348402.33360.42
FC大阪222005843382.76516.28
カターレ富山228006454356.25422.22
アスルクラロ沼津185005253355.77349.06
Y.S.C.C.横浜97003234303.12285.29
ガイナーレ鳥取142005049284.0289.8
ヴァンラーレ八戸144005244276.92327.27
福島ユナイテッドFC175006964253.62273.44

なぜ“お金をかけたクラブ”が勝てないのか?そのギャップの正体とは

人件費が多いクラブが勝ち続ける──
一見すると当たり前のように思えるこの構図が、Jリーグでは必ずしも成り立っていません。

その理由は、「お金」では埋められない要素にあります。

なぜ“お金をかけたクラブ”が勝てないのか?そのギャップの正体とは

1. 戦術と監督力の明確さ

資金が潤沢でなくても、戦術の軸がぶれないクラブは強い

例えば町田は、黒田剛監督のもと、前線からのハイプレスと切り替えの早さを武器に戦術が浸透。

岡山は、木山隆之監督が限られた戦力の中でポジションバランスを徹底。

八戸に至っては、戦術より「全員守備・全員攻撃」の精神がベースにあります。

どのクラブも“どう戦うか”が明確で、それが選手に浸透しているからこそ、少ない予算でも結果を出せるのです。


2. 選手のモチベーションとハングリー精神

高年俸よりも、「試合に出たい」「這い上がりたい」という想いの強さが試合を動かす。

東京ヴェルディや八戸では、J1経験が少ない選手や若手が躍動。スタメンを勝ち取ろうとする競争意識が、ピッチでの「1歩の差」につながります。

ある東京ヴェルディの若手選手はインタビューで「自分はまだ無名。でも、ここで活躍すれば未来が変わる」と語っていました。

このような選手の目の輝きが、チーム全体の推進力になるのです。


3. クラブ全体の一体感と現場力

資金力のあるクラブでは、選手任せ・補強頼みになりがちです。

一方で、町田や岡山のようなクラブでは、フロント・現場・サポーターの距離が近く、同じ目標に向かって動いている感覚があります。

八戸では、地元企業と協力して食事面や移動環境を整え、選手の負担軽減にも努めています。

そういった“裏方の努力”が、ピッチでの走りや集中力に直結しているのです。


つまり、ギャップは「予算額の差」ではなく、「チームとしての完成度の差」

この視点でJリーグを観ると、毎試合がドラマチックに見えてくるはずです。


サポーターの私たちにできること──“数字のその先”を見よう

「勝った!」「負けた…」
そんな感情だけで一喜一憂するのも、もちろんサッカーの醍醐味。

でも、もしあなたが本当にクラブを愛しているなら、もう一歩踏み込んで“クラブの中身”に目を向けてみませんか?

たとえば──
誰にどれだけの年俸が払われているのか。
その補強は、本当に今のチームに必要だったのか。
ベンチを温める高年俸選手がいる一方で、無名の若手が結果を出していることはないか?

クラブの経営や戦略を意識して観戦すると、
「この交代は意図があるな」
「この補強は予算とのバランスが絶妙」
そんなふうに試合の見え方が変わります。

そして気づくはずです。
“サッカーはピッチの上だけじゃない”ということに。

数字を知り、背景を知り、そして感情をのせて応援する──

それが、これからのサポーターの新しい在り方かもしれません。


あなたの推しクラブは、本当に“効率的”ですか?

最後に、ぜひ一度ご自身の応援するクラブについて振り返ってみてください。

「今年も苦しい台所事情だけど、よく頑張ってるな」

「お金はかかってるのに、なんで結果が出ないんだろう?」

そんな“数字と現実のギャップ”に気づいたとき、サポーターとしての視点が一段深まります。

今回ご紹介した「人件費×勝点・得点」のデータは、クラブの戦い方や、見えない努力を可視化するヒントになるはずです。

もしかすると、「あの選手がチームを支えていたんだ」と気づいたり、「この補強、やっぱり失敗だったかも…」と冷静に分析できるかもしれません。

ぜひこの情報を、X(旧Twitter)やInstagramなどで拡散して、仲間と一緒に“クラブの今”を語り合ってみてください。

数字の裏にあるドラマを知れば、応援はもっと熱く、もっと楽しくなる──それが、今回の分析から得られる最大の気づきかもしれません。

◆参考サイト

ゲキサカ
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